はじめに
私たちが日常で目にするメディアやニュースで時折取り上げられる「若年出産」。実際、2015年に放送されたドラマ「コウノドリ」でも中学生の少女が若年出産を迎えるエピソードが描かれ、多くの視聴者の間で話題となりました。この現象を単なる数字や統計として捉えるのではなく、私たちの社会の問題として当事者意識を深めて考えてみませんか。若年出産には様々な背景や影響、そしてそれに伴う支援や予防策が存在します。この記事では、若年出産の背景、影響、そして今後に至るまで読者の皆様と共にこの問題について知り、考えていきたいと思います。
若年出産の定義
「若年出産」という言葉は、さまざまな文献や統計データ、専門家の間で用いられていますが、具体的な年齢の範囲やその背景には変動が見られます。では、どのようにこの言葉を理解すればよいのでしょうか。
年齢の基準
世界保健機関 (WHO) では、10代の出産を「若年出産」としています。これは、10代の女性の身体が出産や育児に対して完全に準備が整っていないという医学的背景があります。この年齢層での出産は、母子双方の健康リスクが高まると言われているためです。
多くの研究や統計では、19歳以下を「若年」として扱います。一部の研究では、24歳以下を指すこともあります。このような基準の違いは、統計や研究の目的、対象地域や国の文化や経済状況に依存しています。
社会的・文化的・経済的な背景よる変化
若年出産の定義が変動する背後には、文化や歴史が大きく影響しています。過去の多くの文化や社会では、女性が結婚し出産するのは現代よりもずっと若い年齢でした。そのため、何を「若年」とみなすかは、時代や文化によって大きく変わると言えます。
近年、都市部を中心に教育の機会が増え、女性の社会進出が進む中、結婚や出産の年齢は上昇傾向にあります。このような背景から、20代前半でも「若年」として出産を捉える視点が生まれることがあります。
このように「若年出産」の定義は一概には決められないものであると言えます。この曖昧さは、「若年」という言葉が社会的、文化的、経済的、健康的な多面的な視点から解釈されるためだと考えられます。
日本における若年出産の現状
過去数十年で、日本の若年出産率は徐々に減少しています。若年出産率の減少には、教育やキャリアを重視する風潮、適切な性教育の普及、避妊手段へのアクセスの向上などが影響していると考えられます。また、日本の若年出産率は他の先進国に比べて比較的低いと言われています。
日本以外の先進国の状況を整理してみましょう。
アメリカやイギリスなど欧米の先進国では、過去に比べて10代の出産率は減少してきています。しかし、それでも日本と比較すると高い傾向にあります。
北欧諸国の若年出産率は、比較的低い傾向にあります。進んだ性教育と避妊へのアクセスが容易なことなどが若年出産率の低さに起因しています。また、社会的サポートや福祉が充実しているため、若くして出産する女性もサポートされやすい環境が整っています。
韓国や台湾は日本と似た傾向を持っており、若年出産率は非常に低いです。これらの国は、先進国の中でも最も低い若年出産率を持つ国として挙げられます。
続いて、年齢階級別にみた出生コーホート別累積出生率のデータを元に日本の若年出産率について見てみましょう。
年齢階級別に見た出生コーホート別累積出生率とは、特定のコーホート(ある特定の年に生まれた女性グループ)が、それぞれの年齢階級でどれだけの子どもを産んだかを示す指標です。
これにより、ある世代の女性が「どの年齢でどれくらいの子どもを産んだのか」ということが明らかになります。たとえば、あるコーホートの女性たちが20-24歳の間に0.5人の子どもを産んだ、25-29歳の間に1.2人の子どもを産んだ、というような情報が得られます。
厚生労働省の出生に関する統計の概況から、年齢階級別にみた出生コーホート別累積出生率は以下の通りであることが分かりました。
「20〜24歳」の累積出生率は、近年緩やかに低下しており、平成7年生まれ(令和元年時点で 24 歳)の者では 0.14 となっていました。
「25〜29歳」では、近年下げ止まりがみられ、平成2年生まれ(令和元年時点で 29 歳)の者では 0.41 となっていました。
「30〜34歳」では、近年上昇傾向がみられ、昭和 60 年生まれ(令和元年時点で 34 歳)の者では 0.51 となっていました。
「35〜39歳」では、上昇しており、昭和 55 年生まれ(令和元年時点で 39 歳)の者では 0.29 となっていました。
このように、経済的理由、キャリア志向、または結婚を後回しにする文化的背景など、様々な要因から、近年の日本では結婚や出産の年齢が上昇していることが分かります。若年出産者にフォーカスして、累積出生率を見ると「15〜19歳」では昭和15年生まれから0.01程度とほぼ横ばい、「20〜24歳」では緩やかに低下しており平成7年生まれで 0.14となっています。数値から見ても、日本における若年出産率は低いことが分かります。
そんな若年出産率が低い日本でも、若年出産を経験する人は一定数の割合で存在しています。若年での出産は多くの場合、計画外の妊娠となり、さまざまな困難に直面することが多いです。これは、社会全体でのサポート体制の整備や、若年出産者への理解と支援が不可欠であることを示しています。
若年出産がもたらす健康リスク
若年出産は、多くの文化や社会においてさまざまな面で議論の的となっています。その中でも、健康に関連するリスクは特に重要な視点となっています。この章では、若年出産が母子の健康にどのような影響を及ぼすのか、詳しく探ることとします。
母子の健康への影響
若い母親が出産する際には、身体的な成熟が完了していないため、以下のような健康リスクが考えられます。
早産や低体重児のリスク
若年の母親は、早産や低体重児を出産するリスクが高いことが研究で示されています。母体がまだ十分に成熟していないこと、栄養状態の不足や十分なケアを受けられない状況が背景にあると考えられます。
貧血
若年の母親は、妊娠中に貧血を発症するリスクが高いです。特に、成長期の女性が鉄分を多く必要とする一方で、不規則な食生活や十分な栄養摂取が難しいことが関連しています。
妊娠中の高血圧は、妊娠中毒症の一つとして、母体と胎児にとって重大な問題を引き起こす可能性があります。具体的には、高血圧症候群や子癇前症(しかんぜんしょう)という症状が知られています。
高血圧症候群
妊娠20週以降に血圧が140/90mmHg以上に上昇する状態を指します。原因としては、妊娠によるホルモンバランスの変化、血管の収縮性の変動、血流量の増加などが考えられます。この状態が継続すると、母体の腎機能や肝機能に異常が生じるリスクが増加します。
子癇前症(しかんぜんしょう)
高血圧症候群に加え、尿中にタンパク質が出る(蛋白尿)という症状が合併する状態を指します。さらに、重症化すると頭痛、視覚障害、上腹部の痛みなどの症状が現れます。子癇前症は、母体だけでなく胎児にも重大なリスクをもたらす可能性があります。具体的には、胎盤の機能低下による胎児の成長制限や、最悪の場合、死産のリスクも考えられます。
妊娠中の高血圧は、母体の体調管理や適切な医療ケアによって、早期に発見・対処することが重要です。特に若年出産の場合、体が十分に成熟していないため、これらのリスクが高まる可能性が指摘されています。
精神的健康との関連性
精神的健康の面でも、若年出産は多くの問題を引き起こす可能性があります。
産後うつ
産後うつは、出産後に新たに母親が抱えることとなる抑うつ症状を指します。具体的には、出産後の数日から数週間をピークに、持続的な悲しい気分、無関心、疲れやすさ、睡眠障害、過度な不安や罪悪感などが現れることが多いです。若年の母親は、産後うつになりやすいと多くの研究で報告されています。精神的な発育がまだ未熟であること、環境の変化、経済的・社会的なプレッシャーが重なることが原因と見られます。
孤立感
若年での出産は、友人や同級生との生活パターンの違いから、孤立感を強く感じることがあります。育児の日常やそれに関連する悩みを同世代の友人と共有することが難しく、育児知識やサポートの不足を感じる場面が多くなり、不安と孤立感を強く感じてしまう可能性があります。
多くのストレス
若年の母親は多様なストレスに直面します。若年での出産に対する社会的な偏見やスティグマが存在し、これによって公的な場面や私的な場面でのプレッシャーや自己評価の低下が生じることがあります。また、若年出産により、家族構成や家族間の関係性に変化が訪れる場合があります。その際に伴う葛藤やプレッシャーがストレスとして感じられることもあります。さらに、若年出産者は経済的に困難な状況に置かれる場合も多く、そうした経済的な不安もストレスの1つになる場合があります。
若年出産がもたらす健康リスクは、身体的なものから精神的なものまで多岐にわたります。これらのリスクを適切に対処するためのサポートや教育の普及が、今後ますます求められることとなるでしょう。次章では、これらの健康リスクを最小限に抑えるための対策やサポートについて詳しく探ることとします。
若年出産がこどもに及ぼす影響
若年出産は、母親自身の生活や経済的、心理的な側面だけでなく、生まれてくるこどもにもさまざまな影響をもたらす可能性があります。以下は若年出産がこどもに与える可能性のある影響をいくつか挙げます。
経済的困難による体験格差
若年での出産は、多くの場合、経済的に不安定な状況での子育てを意味します。多くの若い親は、キャリアの初期段階にあり、まだまだ収入が低いケースが多いです。このような状況下での子育ては、こどもの教育や健康、余暇活動など、さまざまな機会の制約をもたらす可能性があります。こどもが質の高い教育や豊かな生活体験を得るための資金が不足することは、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。
教育の遅れ
経済的な制約や家庭環境の不安定さは、こどもの初期教育へのアクセスを制約する場合があります。特に、幼少期の教育は、言語の習得や基本的な社会性の形成において重要な時期であるため、この時期の教育の遅れは、後の学業や社会参加におけるハンディキャップとなる可能性があります。
心理的・感情的な影響
若年の母親が心理的なストレスや不安を抱えている場合、それがこどもにも影響する可能性があります。こどもは、親の感情や態度を敏感に察知し、それに影響される傾向があります。若年の母親が自身の人生や将来に不安を抱えている場合、その不安やストレスは、こどもの感情の安定性や自己評価に影響を及ぼすことが考えられます。
また、若年の母親とこどもとの年齢差が小さいため、親としての役割や権威の確立が難しくなることがあります。年齢が近いからこそ行えるコミュニケーションも存在するとは考えられますが、このような親子関係の複雑さは、こどもの規範や価値観の形成に影響を及ぼす可能性があります。
若年での結婚やパートナーシップは、破局のリスクが高まることが示されている研究もあります。家庭の不安定さや親の関係の不和は、こどもの心理的安定や安全感に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
総じて、若年出産はこどもにさまざまな影響を及ぼす可能性がありますが、それは母親のサポート体制や環境、経済的状況、教育、メンタルヘルスの状態などによって大きく変わります。適切なサポートや教育、情報提供が行われれば、これらのリスクを軽減することができると言えます。
若年出産の社会的背景
若年出産の背景には様々な要因が絡み合っていますが、中でも経済的、教育的、そして社会的な側面からの影響が大きいとされています。本記事では、これらの背景要因にフォーカスし、若年出産の背後に潜む社会的な課題を探ります。
情報の非対称性と教育の欠如
若者たちは成長の過程で多くの情報を取り入れますが、中でも性教育は特に重要な役割を果たしています。近年、若者の間での性に対する意識や価値観が変化していることを背景に、正確で現実に則した性教育の必要性が叫ばれています。避妊方法や感染症の予防など、適切な性の知識や態度を育むための教育は、今後の社会を担う若者たちの健全な成長をサポートする上で欠かせないものとなっています。
そうした適切な性教育が受けられないことで、避妊方法や家族計画に関する基本的な知識が不足することが、若年出産の一因となることがあります。特に地域や家庭の環境によっては、性に関する話題がタブーとされていることもあり、これが若年層の意図しない妊娠のリスクを増加させる要因となり得ます。
一部の学校では、具体的な避妊方法や性感染症のリスクについての詳しい指導が行われていますが、全国的にはまだまだその実施率は低いと言われています。生徒たちが日常生活で直面するリアルな性の問題について、実践的な知識やスキルを身につける機会が十分ではないとの指摘もあります。
未来への展望の低さ
現代社会において、経済的な困難や社会的な不安は、若者たちの未来への展望に影響することがあります。特に、就職や経済的な自立が難しい環境では、将来を楽観的に見ることが難しくなります。このような状況下では、長期的なキャリアプランや教育の投資よりも、短期的な関係の安定や家庭を築くことに焦点を当てる傾向が見られることがあります。
社会的・文化的価値観
一部のコミュニティや文化圏においては、若くして家族を持つことが伝統的に一般的とされている場合があります。このような価値観や慣習の中で育った若者は、自らの選択の背後に社会的なプレッシャーや期待を感じることがあります。また、地域やコミュニティの中での立ち位置や役割として、若くして母親になることが期待されるケースも考えられます。そのような背景下では、経済的な困難にもかかわらず家庭を築く選択がなされる可能性が出てきます。
経済的なサポートの期待
家族やコミュニティとの繋がりの中で、若年での出産を通じて経済的、社会的なサポートを受けられるという期待感が生まれることがあります。特に、厳しい経済状況の中での出産は、家族や親戚からの経済的な援助やサポートを受ける機会を増やすことができると認識される場合があります。
安定した関係の欠如
経済的、社会的な困難は、若者たちが安定した恋愛関係や結婚を形成する障壁ともなり得ます。しかし、そうした中でもこどもを持つことで、一時的ながらも関係の安定性を得ることができるという考えが根付いている場合があります。その結果、若いカップルがこどもを持つことで、関係を固定化しようとする動きが見られることがあります。
これらの社会的背景や要因は、若年出産の事象を形成する大きな影響を持っています。それぞれの要因が独立して影響を与えるだけでなく、これらの要因が複雑に絡み合い、多様な背景から若年出産という現象が生まれてきているのです。社会全体として、これらの背景を理解し、若者たちがより良い選択をするための支援や環境整備が求められます。
若年出産のメリット
若年出産というと、そのデメリットやリスクがクローズアップされることが多いですが、逆に若くして妊娠・出産することのメリットも存在します。この章では、若年出産の利点について考えてみましょう。
体力的なメリット
年齢が若い時は、体力や回復力が高まっている時でもあります。出産や育児は体力を要する活動であり、若いうちに出産することで、体の負担や疲れを比較的軽減することができると言われています。夜間の授乳など日々のこどもの世話は、思った以上に体力が必要なものであり、体力と回復力の高い若いうちの子育てはメリットであると言えます。
生殖能力のピーク
生殖能力は20代前半がピークとされ、その後徐々に低下していくとされています。若いうちに出産を選ぶことで、不妊のリスクを回避することができる場合もあります。
こどもとの年齢差が少ない
若いうちにこどもを持つと、こどもとの年齢差が比較的少なくなります。これにより、親子のコミュニケーションや共通の趣味を持つことが容易になる場合があります。また、こどもが成人する頃には親自身もまだ若く、一緒にアクティブな活動を楽しむことができるというメリットもあります。
キャリアの途中でのブランク
若いうちに子育てを終えることで、キャリアの中盤や後半での育児休業やキャリアのブランクを避けることができる可能性があります。これにより、キャリア形成の過程での中断を少なくすることができるでしょう。
祖父母との関係
若年出産を選ぶことで、こどもが祖父母と長く関わる時間を持てることもメリットの一つです。これにより、家族の絆を深めることができるだけでなく、祖父母からのサポートや教育も受けやすくなります。
生涯にわたる親子の時間
若い時期にこどもを持つことで、親子での時間をより長く過ごすことができます。これにより、こどもが大人になった後も良好な関係を築く土壌が整う可能性があります。
若年出産には様々なメリットもあると言えます。これらのメリットを享受するためには、周囲のサポートや適切な情報提供が不可欠です。出産のタイミングは個人の価値観や状況によって異なるため、一人ひとりの選択が尊重されることが大切です。
若年出産者への支援
若年出産を経験することになった女性やそのパートナーは、多くのチャレンジに直面することが考えられます。経済的な困難や、孤立感、子育ての難しさなど、様々な問題に直面する可能性が高まります。これに対して、どのような支援が必要で、どのような策が取られているのでしょうか。
国からの支援
出産や妊娠に関わる公的支援には以下のようなものがあります。
児童手当
児童手当は、こどもを持つ家庭の経済的負担を軽減するために支給される制度です。支給額や対象となるこどもの年齢などは、時期や政策によって変動することがありますが、一般的には中学生までのこどもが対象となっています。この手当は、こどもの健康や教育、生活の質を維持・向上させるための支援として提供されます。また、所得によって支給額が変わる場合もあり、所得制限を超えると受給できないケースも存在します。
母子手帳
母子手帳は、妊娠・出産・子育てを行う際の健康管理やサポートを目的として、全国の自治体で発行されています。この手帳には、妊婦健診の記録や、出産後のこどもの成長や健康状態を記入するページが含まれています。母子手帳を持っていると、自治体が提供する無料または割引の妊婦健診を受けることができる場合があります。
妊婦・産後の健康診断
妊婦や産後の女性の健康を確保するために、公的な健康診断が提供されています。この診断は、自治体によっては無料または割引で受けることができます。妊娠中は、胎児の健康状態や母体の変化をチェックするための健診が定期的に行われます。産後は、母体の回復状況や、産後うつのリスクなどをチェックする健診が行われます。これにより、母子の健康を確保し、早期の問題発見や対応が可能となります。
子育て支援センター
子育て支援センターは、各自治体に設置されている施設で、子育てに関するさまざまな情報提供や相談を受け付けています。センターには、専門家やスタッフが常駐しており、子育てに関する悩みや疑問を相談することができます。また、こどもと遊べるスペースや、親子の交流の場としての機能も持っています。若年出産者や初めての子育てを行う親たちが、安心して子育てを行えるようサポートしています。
NPO・非営利団体による支援
若年出産者は特有の課題や悩みを抱えている場合があり、独自のサポートが求められることが多くあります。公的機関だけでなく、NPOなどの非営利団体が彼らのサポートを積極的に進めているのはこのためです。そうした団体は、公的機関のサポートとは異なる視点やアプローチで、より実践的なサポートを提供しているのが特徴です。
情報提供と相談支援
若年出産者は、育児だけでなく、生活の様々な面での問題や不安に直面します。専門的な知識を持つスタッフが、悩みに対するアドバイスや最新の情報提供を行い、法律的な問題や経済的な困難時の具体的な支援に関する相談も扱っています。
コミュニティづくり
若年出産者同士が集まり、経験や悩みを共有するコミュニティの形成は、彼らの孤立感を大いに軽減します。定期的なミーティングやイベントを通じて、相互の絆や連帯感が生まれ、一人ひとりの心のサポートとなります。
住環境の整備と物資の提供
若年出産者の中には、適切な住環境が不足している場合があります。そうした際に、適切な住居を提供するプロジェクトや、住環境を整備する活動を通じて、安全で安心して子育てができる場を提供しています。また、経済的な困難を抱える家庭にとって、子育てや生活に必要な物資の支援は非常に有意義です。非営利団体では、物品寄付を受け付けたり、資金調達活動を行ったりして、必要な用品を提供しています。
医療への導線づくり
適切な医療サービスへのアクセスは、若年出産者にとって必要不可欠なものです。NPOなどの非営利団体では、適切な医療機関への紹介や専門医との連携を図り、母子の健康を最優先にできるようなフォロー体制を構築して支援を行っています。
ワークショップやセミナーの開催
子育てに関する専門家や経験者からの講義やワークショップを定期的に開催することで、親たちが新しい知識やスキルを身につけることが促進されます。また、これらの機会を通じて、他の若年出産者との交流も増え、相互のサポートや情報交換が行われるようになります。
実際に支援を行っているNPO法人
認定NPO法人 ピッコラーレ
「ピッコラーレは、「にんしん」をきっかけに、だれもが孤立することなく、
自由に幸せに生きることができる社会の実現をめざします。」
(認定NPO法人 ピッコラーレHP:https://piccolare.org/)
このようなNPOや非営利団体の活動は、公的機関だけでは補完できない独自のサポートを提供します。専門的な視点での情報提供、居場所の提供、医療のサポートなど、多岐にわたる活動を通じて、若年出産者が安心して子育てを進めることができる環境を整えています。
教育機関との連携による支援
若年出産者の教育再開へのサポート
若年での出産は、多くの場合、学業やキャリアの中断を意味します。このような状況に置かれた若者たちが、将来的に自らの夢や希望を追い続けるためには、教育の再開が不可欠です。
日本では、近年、若年出産者をサポートするためのさまざまな取り組みが始まっています。特に、教育機関と行政が連携して、出産後も安心して学業を続けることができる環境の整備が進められています。
具体的には、学校側がフレキシブルな授業スケジュールの提供や、リモート授業の導入、特別なカウンセリングサービスの提供など、学生の状況に合わせた柔軟なサポートを行っています。また、学費の減免や奨学金制度の拡充、託児所の整備など、経済的・物理的なサポートも進められています。
さらに、地域コミュニティやNPOが中心となり、若年出産者が学業や職業訓練に専念できるよう、子育てサポートの提供や情報共有の場の提供など、多岐にわたる取り組みが行われています。
若年出産者が安心して子育てを進めるためには、公的機関、NPO・非営利団体、教育機関など様々な機関の協力が必要不可欠です。多様な支援策を通じて、若年出産者が自身の生活と子育てに自信を持つことができ、自然と社会と繋がれるような環境の構築が目指されています。
若年出産の予防と今後の展望
予防策としての性教育の強化
若年出産の予防策として、最も直接的で効果的なのは、性教育の適切な提供です。性教育は、若者が自身の身体や性に関する知識を持ち、適切な判断を下すための基盤となります。
日本の学校教育においては、近年、性教育の内容や方法が見直されつつあります。一昔前までは、生物学的な側面や繁殖に関する知識が中心であった性教育も、現代ではリアルな性の問題、避妊や性感染症の予防、相互のリスペクトに基づく関係性の築き方など、より実践的な内容が取り入れられてきています。
また、授業だけでなく、学外活動やNPOとの連携によるワークショップなど、多角的なアプローチが試みられています。特に、実際のケーススタディーや体験談を取り入れた授業は、生徒たちにとって感受性が高まり、実生活に役立つ知識やスキルの習得が期待されています。
社会全体での支援体制の構築
若年出産の予防やサポートは、学校や家庭だけの問題ではありません。社会全体が一丸となって、若者の健やかな成長と安全な環境を守るための支援体制を構築する必要があります。
まず、メディアや広告、公共のキャンペーンなどを通じて、若年出産のリスクやその後の困難な状況を正確に伝えることが求められています。誤解や偏見を払拭し、若者たちが現実的な視点から将来を見据えることができるような情報提供が重要です。
また、地域コミュニティや企業も、若年出産の予防やサポートに積極的に関与することが期待されています。例えば、地域の子育て支援センターや保健所での無料相談、企業の社員研修や福利厚生としての性教育プログラムの導入など、様々な形での取り組みが進められています。
今後の展望としては、若者自身が主体となって、性に関する情報や知識を共有し、自分たちの権利や健康を守るための活動を展開することが期待されています。そのためには、若者の声を反映させた政策や制度の構築が不可欠です。
総じて、若年出産の予防とサポートは、個人の問題だけでなく、社会全体で取り組むべき課題となっています。正確な情報の提供や教育、そして包括的な支援体制の構築を通じて、すべての若者が安心して未来を見据え、自分らしい人生を歩んでいけるような環境を整えることが重要です。
おわりに
本記事を通じて、若年出産という一見個人的な選択や事象にも、社会全体の背景や様々な影響が絡み合っていることがお分かりいただけたでしょうか。そして、それぞれのポイントには、私たち一人ひとりができるアクションや考え方の変革が求められています。私たちの社会問題であるという当事者意識を持ち、予防や支援、そして未来の展望を共に築いていくために、知識を深める、理解を広げる行動をすることが大切です。一緒にこの問題に向き合い、より良い未来を創り上げていきましょう。
引用・参考
令和3年度 出生に関する統計の概況|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/dl/01.pdf
認定NPO法人ピッコラーレ公式ホームページ|認定NPO法人ピッコラーレ